令和元年8月 会長先生法話

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    ※朔日参り(布薩の日)式典にて、大阪教会松本教会長より教団月刊誌「佼成」8月号『会長法話』から今月の信仰生活の指針を頂きます。

     

    会長法話    

     

    自分の「宝」を輝かせる   

     

              庭野日鑛 立正佼成会会長

     

    自 信 を も ち に く い 時 代

     

    「よそはよそ、うちはうち」――ほかの人や家と比べて、自分やわが家にないものを子どもがねだったときに、親の口から出るのは、きまってこのような言葉でした。一人ひとり、それぞれ独自の人生を歩んでいるのですから、人と自分を比べる必要はないということを、わかりやすく表現した言葉とも受けとれます。 

     

     しかし、人をうらやみ、ときには劣等感を抱くことも、人間の自然な感情かもしれません。口惜しさをばねに努力を重ね、能力を発揮して、向上をめざす人も多いのです。

     

     仏教では、人と比べる見方がものごとを見る目をいかに曇らせるかを教えています。仮に人をうらやむ気持ちが生まれても、それを必要以上の欲望や無益な憎しみに発展させないよう、心を制御(コントロール)することが大切なのです。

     

     一方で最近では、劣等感を抱くあまり生きる自信を失くし、「自分には、生きている価値がない」と思いこんでしまう人がふえているように思います。

     

     法華経の「信解品」に「長者窮子の譬え」という話があります。そこに登場する「窮子」も、そのような一人でしょう。放浪生活を送っていた自分を雇ってくれた長者に信頼され、金銀財宝を収める倉の管理まで任されながら、それでもなお、「自分はとるに足りない人間だ」と思いこんで、卑屈な思いを拭いきれないのです。

     

     いま、この「窮子」のように自信をもてないという人がふえているのはなぜかといえば、欲望を刺激する情報が過剰にあふれるなか、経済的な格差とか、人生において得るものが多いか少ないかなどを、多くの人が容易に推し量れる時代だからではないでしょうか。

     

    仏 性 を 輝 か せ る

     

     たとえば、「人よりも貧しいと、不幸でつらい」という価値観があるとします。この価値観はじつに不確かなものですが、仮にそれが自信や希望を失わせる要因の一つだとしても、こうした価値観に基づいて「自分は不幸だ」と決めつけているのは、ほかでもない自分自身です。人生は「縁」によってどのようにも変化し、固定したままで存在するもの何一つとしてないのです。それなのに、自分にそうしたレッテルを貼って苦しみ、自信や希望を失くしてしまっては、授かった命がもったいないと思います。

     

     劣等感は、向上心の裏返しといいます。胸の奥底に「よりよく生きたい」という願いがあるからこそ、ときに口惜しい気持ちを芽生えてくるのです。ただ、自分が不幸なのは世の中のせいだとか、他人のせいだといった思いこみにとらわれると、成長の糧となるはずの劣等感が愚痴の種に止まり、向上心に結びつかないのではないでしょうか。

     

     さて、先の「信解品」の「窮子」は、長者の臨終間際、枕辺に集まった人びとの前で、長者からこう告げられます。「この男は、幼いころ行方知れずになった私の子です。私の財産は、すべてこの子のものです」と。これは、卑屈な思いの「窮子」が自分の宝に気づかされる瞬間ですが、この言葉には、「すべての人が仏の子であり、仏と一体の仏性そのものです。だから、自信をもってその自分の宝(仏性)を輝かせなさい」と伝える真意がこめられています。

     

     そして、自らの「宝」に気づいて喜ぶだけではなく、まだそのことを知らない人に自分の気づきをお伝えして、その人の「宝」を照らすふれあいをしていくと、自分の「仏性」がよりいっそう光り輝くことを教えるのです。

     

     仏の教えを信じ、理解することが「信解」ですが、人はみな等しく「仏性」という宝をもっていると「信解」し、お互いさま、自信をもって人生を歩んでまいりましょう。

     



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